少年時代、親友に恋心のようなものを感じ、悩まされる事があった。
大人になるにつれ、そうした感情は薄れ、やがて、私は結婚した。
少年時代から彼の周りには彼の気を引こうとする女性で一杯だった。
そうした女性たちの中に妻の友人がいた。
妻は友人に付いて来たのだが、彼にはまったく興味を示さなかったようだ。
友人が諦めて去った後も、気が付けば常に妻は私の側にいた。
妻は、彼が誰とも付合わないのは、私のことを好きなのでは、と疑うようになった。
私も、彼は女性に興味が無いのでは、と考えた事もあったが、
特に女性だけではなく、私を含む男性にも彼は冷たいことから、
理想が高く、自分に釣合う女性が見つからないだけだと妻に話した。
数日後、山のような見合い写真を持って、彼のところに行くことになった。
妻は、彼に次々と写真を見せては、淡々と人となりを説明した。
横で私は、よくぞこれだけ多種多様な女性を集めた、
と初めのうちは感心して聞いていたが、やがて飽きてしまった。
最近訪れる事の少なくなった彼の部屋を見渡した。
押入れの隙間から何かが光を反射していた。
子供の頃から知っている気安さから、遠慮無しに押入れを開けた。
人の形をした鏡、いや、鏡張りのマネキンが、不審な面持ちの私を映していた。
関節が動くようだ、握手してみた。
股のところに穴があり、何か白いものが...
振返ると、凍り付いた表情の彼と、納得した表情の妻がこちらを見ていた。
妻は安心した表情で、見合い写真を片付けていた。
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