国境がなくなった今日でも、ゴミの問題はなくなっていなかった。
ある日、短い休暇を終えた代表は側近に機嫌よく語った。
「昨日はディズニーランドに行ってきたのだよ」
翌日から大規模な改革が始まった。
まず、省庁の徹底的なリストラ。余った人員を清掃省へ。
「ゴミは道端へ」をスローガンに家庭ゴミを路上に廃棄する事を推進。
路上のゴミは清掃省のメンバーが分別しながら回収した。
市民の良心に頼るよりも確実な分別で、再利用のための作業が効率よくできた。
さらに、代表直属の研究所で再利用しやすい材料の開発した。
この材料は9種類。
9種類全部をある程度の量混ぜ合せると、摂氏40度ほどで発火、発熱、発光、
やがて火は消え、きれいに9種類の塊に分離、さらに温度が下がると各々粉末になる。
9種類が揃わないと発火しないし、4〜5種類も使えば大抵の物は作れるし、
加工も容易で、万能とも言える物質。
政府はこれらの材料の特許等で、これまで脹れ上がっていた負債を返済した。
改革の当初には物陰にこっそりとゴミを捨てる者もいたが、
今では誰もが、工場なども含めて、道端にゴミを捨てていた。
清掃省の巡回も、日に数度、特にゴミの多い所は更に重点的に行われた。
最近清掃省の事故が多い。
忙しいから、というのが、政府の見解。
比較的ゴミの少ない日に、代表の引率で清掃省全員の慰安遊星旅行が行われた。
しかし、1日の旅行の予定の筈が全然帰って来ない。
一度身についた習慣、たった1日でさえ、つい路上にゴミを捨てるものがいた。
数日、数週間、数ヶ月...
この星はゴミだらけ。
風が吹き、混ざり合うゴミ、混ざり合う9種類の物質、火気厳禁。
月の基地に代表はいた。
「地球はパレードだね。花火、花火...」
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